大学院 保健学科研究科
GRADUATE
SCHOOL OF
MEDICAL
LABORATORY
SCIENCE
検査技術科学分野
OVERVIEW
概要
検査技術科学分野は、2022年10月に大講座制から小講座制に移行しました。それに伴い、「微生物・遺伝子学講座」、「分子血液病理学講座」、「分子病態・循環生理学講座」、「細胞生理・免疫学講座」の4講座が開設されました。
小講座制の大きな目的は、研究および教育面での教員間連携を強固にし、さらに研究室や領域を跨いだ研究活動を活発化することが目的です。大学院生はそれぞれの講座の教授および准教授、講師の下、研究活動や専門資格の取得に向けて過ごすことになります。さらに2025年8月には、「環境微生物・遺伝子解析講座」が開設しました。この講座は、サンデングループホールディングス(株)との産学連携の一環で、微生物特性を産業や医療分野に効果的に活用する研究を実施していきます。
各講座の詳細は以下の通りです。研究内容の詳細は、各講座・教員のホームページをご覧ください。
微生物・遺伝子学講座
微生物学や遺伝子学に関連した講義・実習を担当します。研究では、微生物やウイルス、遺伝子解析を要する実験を行い、微生物がヒトに対して与える影響をミクロな視点から解明していきます。細胞を扱う実験が多いですが、動物実験を行うこともあります。
講座のホームページ分子血液病理学講座
病理学や血液学・輸血検査学に関連する講義・実習を担当します。研究では、遺伝子解析などを駆使して、リンパ球に関連した疾患の実態解明に取り組んでいます。
『ゲノム医療サイエンティスト育成コース』、『ゲノム医療・医科学コース』に所属する学生は、本講座の教員の下、大学院生活を過ごすことになります。
分子病態・循環生理学講座
生理学や一般検査学・医用工学に関する講義・実習を担当します。研究では、細胞や動物を用いて、病態の発症機序や治療方法の探索を行っています。
『超音波検査士育成コース』に所属する学生は、本講座の教員の下、大学院生活を過ごすことになります。
細胞生理・免疫学講座
生理学や臨床化学,免疫検査学に関する講義・実習を担当します。研究では,呼吸器疾患や免疫不全,肝疾患,筋疾患をターゲットに,病態解析を行っています。細胞や動物を使った実験が多いですが,患者さんの検査情報を用いた解析を行うこともあります。
講座のホームページ環境微生物・遺伝子解析講座
岡山大学大学院保健学研究科とサンデングループホールディングス株式会社 (広島県福山市) との産学連携で研究を行います。微生物の代謝や発育に着目し、産業や医療分野への応用・活用を目指し、遺伝子レベルでの研究を遂行していきます。
講座のホームページSTUDY
学びについて
博士前期課程 2年制
臨床検査科学・高度実践研究コース
臨床検査は医療を支える大事な“柱”の一つであり、科学技術の進歩が速やかに反映される領域です。本コースでは研究活動を通して、病理学・生理学・微生物学・免疫学・生化学など、種々の専門領域における専門知識や疾患についての理解を深めます。さらに、検査技術科学分野の特性を活かし、最先端の分子生物学的な分析手法などに習熟して、新しい検査方法の研究・開発を担う創造力も高める素地を養います。
研究室はこちら博士前期課程 2年制
ゲノム医療サイエンティスト育成コース
がんゲノム医療が加速する中、DNAやRNAなどの解析技術やタンパク質の機能解析など実際に検体を取り扱う知識と技術をもった臨床検査技師の育成が喫緊の課題となっています。そこで本コースでは、ゲノム医療で活躍できる臨床検査技師を育成します。
学位研究を行っていく過程で、核酸の保存や抽出方法、そして様々な遺伝子解析技術を取得するとともに「遺伝子分析科学認定士」、「バイオインフォマティクス技術者」、「上級バイオ技術者」など関連する資格取得も目指します。
博士前期後期課程一貫 5年制
超音波検査士育成コース
人工知能(AI)による検査の自動化が進む一方で、エコー検査はこれからも熟練した技術が必要とされます。本コースでは、博士前期課程、博士後期課程の一貫制(5年制)を導入することで、超音波検査士認定資格および博士学位の取得を目指します。
一貫制(5年制)を導入することで、学位取得と超音波検査士の受験資格(3年以上の臨床実習)をクリアした全国初のプログラムです。岡大病院や連携病院での臨床研修を通して、高度で実践的なエコー技能を習得できます。
博士後期課程 3年制
臨床検査科学・先端研究コース
病理学・生理学・微生物学・免疫学・生化学など、各専門領域の知識を深め、疾病の発症や進展メカニズムの解明に留まらず、診断に寄与する新しい検査方法の研究・開発を担う探求心や創造力を高めます。さらに、分子生物学的な分析手法、工学や情報科学の知識・技術等も応用し、新しい生理機能診断法や診療支援システムの研究・開発を目指します。本コースでの研究活動を通して、各専門領域における高度な知識と技術を持ち合わせ、保健・医療・福祉の向上に貢献し、先導する医療人、研究者および教育者を育成します。
研究室はこちら博士後期課程 3年制
特別履修
ゲノム医療・医科学研究コース
がんゲノム医療が加速する中、DNAやRNAなどの解析技術やタンパク質の機能解析など実際に検体を取り扱う知識と技術をもった臨床検査技師の育成が喫緊の課題となっています。そこで本コースは原則として「ゲノム医療サイエンティスト育成コース」を修了した者を対象とし、臨床および基礎研究を通して最先端の医科学研究を実践します。
博士前期課程で修得した技術や知識をさらに発展させ、最先端の医科学研究を実践し、high impact
journalへの投稿や上級の遺伝子関連資格の取得を目指します。また、岡山大学で実際に行われている遺伝子診断業務に携わり、実務経験を積むことでキャリアアップを図ります。このように研究と実務を通して、研究と教育を両立できるサイエンティストを育成します。
PROGRAM
検査技術科学分野の先輩たちの実績
OUフェローシップ/OU-SPRING採用者輩出実績あり!
令和3年2月に岡山大学は,文部科学省補助事業「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ総説事業」に採択されました。
これを受けて,岡山大学の重点研究分野で研究を推進する若手研究者の養成,ひいては我が国の科学技術・イノベーション創出を担う研究者の創成を目的として,
「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ (OUフェローシップ)」が創設されました。2024年度より新たに「岡山大学次世代研究者挑戦的研究プログラム
(OU-SPRING)」と名称を変更し、若手研究者への支援が行われています。
OU-SPRINGは,博士後期課程3年間の生活費 (年額220万円) と研究費 (年額40万円程度)
が大学から支給され,金銭的な不安が軽減され,自身の研究に集中することができます。
採用されるには研究計画書を提出する必要があり,さらには学内での厳正な審査が行われますが,本分野からは5名
(OUフェローシップ:令和3年度1名,令和4年度1名/OU-SPRING:令和6年度2名,令和7年度1名) がこれまで採用されています。
また,OUフェローシップに採用された2名およびOU-SPRINGに採用された1名はその後,本分野の助教として着任し,モデルケースとして活躍しています。
このように岡山大学では,博士後期課程学生の研究環境を整える取り組みが盛んに行われており,さらに本分野では,高く評価される研究テーマおよび研究計画を立案する能力を培う環境も整っています。
日本学術振興会・特別研究員の輩出実績あり!
1985年に始まった日本学術振興会の特別研究員制度は,我が国の優れた若手研究者に対して,自由な発想の下に主体的に研究課題などを選びながら研究に専念する機会を与え,研究者の養成・確保を図る制度です。特別研究員には,博士課程在学者が対象となるDCと,修了者が対象となるPDとがあります。長年継続されている制度で,研究者としては非常に高いステータスとなる制度です。
特別研究員も,上記OUフェローシップと同様に,我が国から研究奨励金 (生活費月額20万円) と研究費 (年150万円以内)
が支給され,自身の研究に専念することができます。こちらも研究計画書を作成する必要があり,国内の研究者による厳正な審査が行われますが,本分野ではDC採択者を1名 (令和3年度:1名)
輩出した実績があります。OUフェローシップだけに留まらず,国中でも高く評価される研究テーマおよび研究計画を立案する能力を培う環境が,本分野には整っています。
THESIS & DISSERTATION
過去の学位論文題目一覧
指導教員名をクリックすると、各教員・所属講座のHPを見ることができますので、研究テーマ等気になる方はぜひご覧ください。
| 2024年度(修士) |
臨床検査科学・高度実践研究コース ① Extracellular vesicles derived from the stromal vascular fraction inhibit the expression of extracellular matrix degrading enzymes in an in vitro model of Osteoarthritis ② 前処理による細胞外小胞の遺伝子発現制御の検討 指導教員:廣畑聡 |
ゲノム医療サイエンティスト育成コース ① ゼブラフィッシュを用いた,難治性悪性リンパ腫の新規治療法の探索 ② 病理画像解析を使用したDLBCLの微小環境内の細胞における相互作用の解明 ③ Identification of Effective Human Plasma Proteins Targeting Idiopathic Pulmonary Fibrosis (IPF) 指導教員:佐藤康晴 |
超音波検査士育成コース ① ABCA1変異および肝臓遊離コレステロール蓄積は非アルコール性脂肪肝炎の進展に寄与する 指導教員:渡辺彰吾 |
臨床検査科学・高度実践研究コース ① 胆管ステントの閉塞に関与する細菌の解析 指導教員:後藤和義 |
2024年度(博士) |
① Copy Number Analysis of 9p24.1 in Classic Hodgkin Lymphoma Arising in Immune Deficiency/Dysregulation (免疫不全/調節異常に起因する古典的ホジキンリンパ腫における9p24.1のコピー数解析) 指導教員:佐藤康晴 |
臨床検査科学・高度実践研究コース ① Clinical variables predicting liver-related events in steatotic liver disease diagnosed by liver biopsy (肝生検によって診断された脂肪性肝疾患における肝臓関連イベント予測の検討) 指導教員:廣畑聡 |
|---|
FUTURE
卒業後の進路
卒業後の進路
| 岡山大学大学院保健学研究科(助教) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 岡山大学病院(検査部) 広島大学(技術系職員) 愛媛大学総合科学研究支援センター(技術系職員) 就実大学薬学部医療薬学科(実験助手) 川崎医療短期大学(助教) 阪大理研観音寺研究所研究開発 綜合臨床サイエンス(東京) 化学及血清療法研究所 阪大微生物病研究会(香川) |
岡山大学大学院保健学研究科博士後期課程 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程 CAC医療技術専門学校 岡山大学医学部歯学部附属病院 川崎医科大学附属病院 MEセンタ- 川崎医科大学附属病院岡山協立病院 愛媛大学医学部附属病院 大阪大学医学部附属病院 神戸大学医学部附属病院 名古屋大学医学部附属病院 |
| 岡山大学大学院保健学研究科(助教) 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 帝京大学医療技術学部臨床検査学科(助教) 川崎医療短期大学臨床検査科(助教) 岡山大学病院検査部(社会人) 九州大学(社会人) 川崎医療福祉大学(社会人) 香川保健医療大学(社会人) 川崎医療短期大学(社会人) 千里金蘭大学(社会人) 岡山医療センター(社会人) 岡山赤十字病院(社会人) |
INTERVIEW
大学院生に聞く!
臨床検査科学・高度実践研究コース/臨床検査科学・先端研究コース
河井 友来さん (博士前期課程1年・研究分野:生理学)
【コースの特色と魅力】
動物実験から遺伝子解析といった他分野にわたる幅広い知識・実験手技を習得できることがこのコースの特色です。また、論文抄読会を通して自分と違う分野の研究に触れたり、病院でのアルバイトで臨床的な経験を積んだり、各個人の目標に向けた様々な活動に取り組みやすい環境が整っています。
【何を学んでいるか / 何を学べるか】
他の研究室の方と共同して、口腔細菌が肝性脳症に及ぼす影響について研究をしています。初めは知識も技術も持っていませんでしたが、先生や先輩方の助けを借りながら日々知識を培い、試行錯誤して自分の研究を進めています。自分の研究について国内や海外の学会で発表する機会もあるので、とても良い経験になると思います。
【これからの夢や目標】
将来は臨床検査技師として病院で働きたいと思っています。近年、臨床検査技師の働き方や求められる能力が変化してきており、自分自身で考え、意見を提案できる人材が求められています。大学院で培った能力を臨床の現場でも発揮できるよう、これからの研究活動に力を注いでいきたいと考えています。
臨床検査科学・高度実践研究コース/臨床検査科学・先端研究コース
小松原 万里奈さん (博士前期課程1年・研究分野:微生物学)
【コースの特色と魅力】
感染症は個人の健康だけでなく、ときに「人々の生活そのもの」を脅かす危険性を孕んでいます。微生物学は、そんな感染症に焦点を当てることで、人々に「健康」と「安心な生活」を提供できる点が魅力であると考えています。この研究室の最大の特色は、細菌の取り扱いを学べることですが、その他にも細胞実験やPCRなど、幅広い実験方法を学ぶことが可能です。
【何を学んでいるか / 何を学べるか】
現在は口腔細菌のバイオフィルムに関する研究を行っており、各菌に対する殺菌剤の効果を検証しています。また、大学病院から検体をお預かりし、ピロリ菌の薬剤感受性試験に携わる機会もあります。私はこうした経験を通して細菌の取り扱いを始めとした実験の手技を学んでいます。また、学会に参加することもでき、発表のスキルを磨く素晴らしい機会となっています。
【これからの夢や目標】
将来は、大学院で培った微生物学に関する専門知識を生かして社会に貢献したいと考えており、臨床検査だけでなく、企業における研究開発職や品質管理職なども視野に入れて就職活動に取り組んでいます。自身が得た知識と技術が、より多くの人の「健康」と「安心」につながるよう日々の勉強に励んでいます。
ゲノム医療サイエンティスト育成コース
木下 涼生 (博士前期過程1年・研究分野:病理学)
【コースの特色と魅力】
本コースでは、がんゲノム医療で必要とされる核酸やタンパク質の取り扱いに関する知識と解析技術を学ぶことができます。また、これらの知識を活かした研究活動も活発に行われ、充実した勉学と研究の日々を送ることができます。遺伝子関連の資格取得にも挑戦し、自分自身に多くの付加価値を付けることができる点も大きな魅力です。
【何を学んでいるか / 何を学べるか】
研究を進める中で、新たな解析技術や遺伝子に関する知識を習得し、日々成長を感じています。また、この過程で物事を多視点から考える重要性を学びました。遺伝子解析のやりがいや楽しさを実感できるだけでなく、異なる視点から問題を捉え、柔軟な思考を身につけることができます。
【これからの夢や目標】
大学院での研究を経て、卒業後は臨床の現場で実務経験を積むことを計画しています。
臨床現場で多くのことを学び、実践的な知識と技能を深めていきたいと考えています。将来的には大学教員となり、臨床で得た経験を基にした教育を行い、次世代の医療従事者を育成することを目標としています。高度な研究技能と臨床技能を併せ持った指導者として、教育と研究の両面で貢献していくことを目指しています。
超音波検査士育成コース
中山 日菜子さん (博士後期課程1年・研究分野:生理学)
【コースの特色と魅力】
研究活動と並行して連携病院での研修や学内実習を行うことができる点が,本コースの最大の特色です。臨床現場で必要となる技術や知識を早期から習得できるため,大学院に在学しながらも臨床検査技師としてのスキルアップを図ることができる点が魅力だと感じています。また,近年は臨床研究にも着手しており,本コースで得た技術や知識を研究にも応用することが可能である点も魅力的だと思います。
【何を学んでいるか / 何を学べるか】
私は主に,循環器の分野について勉強しています。現在は連携病院とクリニックにて,週に2回実習を行わせていただいています。実習では,患者さんの心臓超音波検査を実際に行い,先輩技師や循環器内科の先生にご指導いただきながら技術の向上や疾患等に関する知識の習得を目指しています。また,心電図検査など他の生理機能検査にも携わらせていただいており,幅広く経験を積むことが可能です。
【これからの夢や目標】
大学院在学中に超音波検査士の認定資格を取得し,将来は大学教員として社会に貢献することを目標としています。研究活動や実習を通して,本コースで高度な研究技能と臨床技能を習得し,両者を併せ持った指導者を目指していきたいです。
MESSAGE
活躍するOB・OG
大学院で伸ばす自分の強みと創造する新たな価値
前濵 かんなさん
2022 年 岡山大学医学部保健学科 卒業
2024年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2024年 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 医療技術部 臨床検査部門 勤務
【大学院に進学した理由は何ですか?】
私が卒業研究で所属した佐藤研究室では、研究に加えて抄読会や学会発表、資格取得など、これまでの授業や実習とは異なる新たな学びの機会が多くありました。当初から、大学卒業後の選択肢の一つとして大学院進学を考えていましたが、佐藤研究室での学びや経験、さらには大学院で活躍する先輩方の姿に刺激を受け、自分も研究活動を通して、臨床検査技師とは異なる新たな付加価値をつけたいと強く思うようになり、大学院への進学を決意しました。
【大学院での生活はどのようなものでしたか?】
大学院では実験をはじめとする研究活動に加え、臨床検査技師として臨床での遺伝子解析業務にも従事しました。遺伝子検査は、結果が診断や治療に直結する非常に重要な検査です。
したがって、常に正確な検査結果を報告するためには、検査に関わる全ての過程を疎かにしてはなりません。この経験を通じて、任された仕事に対する責任感をこれまで以上に強く意識するようになりました。
振り返ると、あっという間の2年間でした。初めはわからないことばかりの不安な日々が続き、時には悔しさから涙することもありました。そのような中で支え合い、共に困難を乗り越えてきた同期の存在は大きく、卒業した今でも困った時には相談し合う、大切な仲間となりました。
また、先生や先輩、後輩にも恵まれ、非常に有意義な充実した大学院生活を過ごすことができました。
【大学院での経験は、社会でどのように活かされていますか?】
大学院での活動を通じて、専門的な知識や実験手技の習得だけではなく、人間としても大きく成長できました。特に「批判的思考力」「責任感」「チャレンジ精神」の3つは、病院にて臨床検査技師として働く現在、様々な場面で役に立っていると感じます。
毎週の抄読会や後輩指導などを通じて養った「批判的思考力」は、検査結果が患者さんの状態を正確に反映しているかを常に疑い、慎重に結果の解釈をする姿勢に繋がっています。また遺伝子解析業務や研究活動で培った「責任感」により、血液・生化学検査を担当する現在、一度に沢山の検体を扱う中でも、取り違えや誤った結果の報告を防ぐため、基本的な手技や知識の見直しを徹底しています。さらに学会発表や資格取得、共同研究への参加を通じて得た「チャレンジ精神」により、新たなことへ挑戦する際の不安を乗り越え、周囲の助けを借りながら成長できていると実感しています。初めは、自身が大勢の前で発表する姿は想像し難く、自分には難しそうという先入観がありました。しかし、実際に挑戦してみると意外にも何とかなるものだと実感し、今では「自分にできることからやってみよう!」という気持ちで、初めてのことにも果敢に取り組めるようになりました。初めは苦手意識のあった遺伝子検査学に対しても、資格取得に向けた勉強をきっかけに興味が深まり、さらに学びを深めたい分野の一つとなりました。
【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
大学院では努力次第で、自分に多くの付加価値をつけることができます。大学院へ進学することで、大学の同級生よりも2年、社会に出るのが遅くなるかもしれません。しかし、それ以上に大学院で過ごした時間や学生時代のうちに何かに一生懸命取り組んだ経験は、かけがえのない財産となります。そのため、少しでも大学院での生活に興味があれば、ぜひ大学院進学を検討してほしいと思います。各分野のスペシャリストである先生方が多く在職している検査技術科学分野では、新たな研究の世界を知り、今後の人生における選択肢を増やすことができるはずです。
大学院は未来に大きく活かすことができる貴重な機会です
前川 倖希奈さん
2021年 森ノ宮医療大学医療技術学部臨床検査学科 卒業
2023年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2023年 キヤノンメディカルシステムズ株式会社 MRI営業部 勤務
【大学院に進学した理由は何ですか?】
私が大学院に進学した理由は、一言で言うと「好奇心」です。
学部生の頃、私は大腸癌の浸潤・転移のメカニズムを研究する研究室に所属していました。実験や細胞の管理で多くの時間を費やしましたが、目に見える成果が出た時はとても達成感を感じ、研究が大好きになっていきました。研究を進めていく中で、固形癌だけでなく血液の癌、疾患についても研究したいという気持ちが芽生え、異なる環境でさらに深く学ぶことを考えました。病院に就職する友人たちより2年遅れての就職になることには不安もありましたが、好奇心が勝り、もっと研究を続けたいという思いから大学院への進学を決意しました。
【大学院での生活はどのようなものでしたか?】
大学院生活は、全てが充実したかけがえのない時間でした。
学部生の頃は研究の規模が小さく、個人で黙々とやるような研究生活でした。しかし岡山大学大学院では、研究環境が整っており規模も大きいためよりやりがいを感じましたし、チームとして他の人が行っている研究について知る機会が多く、さまざまな方に相談しながら研究を進められたことがとても良かったと感じています。
さらに研究室の先生、先輩、同期、後輩に恵まれ、関わってくださった全ての方のおかげで人として成長でき、大学院に進学していなかったら学べなかった多くの知見を得ることができました。なにより他大学から進学してきた私を暖かく迎えてくださり、とても嬉しかったです。
また、若手研究者を盛り上げるためのイベント運営に参加することで、他学部の学生や先生方と交流する機会がありました。そこでは、異なるバックグラウンドを持つ方々と意見交換を行うことができ、さらにチームワークの大切さも学ぶことができ、とても貴重な経験になりました。
【大学院での経験は,社会に出てどのように活かされていますか?】
仕事をする上で大きく活かされているスキルは2つあります。
1つ目はプレゼンテーションのスキルです。私は現在、特定の製品の専門家としてお客様と向き合う技術営業職として働いています。この仕事ではお客様の前で担当製品のプレゼンテーションをする機会が多く、研究活動を通じて身につけた専門分野をプレゼンテーションするスキルは、現在の仕事に非常に活かされています。
2つ目は忍耐力です。研究は全てが想定通りに進むことは少ないです。さまざまな可能性を思考するのに多くの時間を費やし、研究がうまくいかなかった時には忍耐力が求められました。これにより、長期的なプロジェクトや予期せぬ困難に対する耐性が自然と身につきました。現在の職場でも、私が担当する製品では長期にわたる商談に向き合うことがほとんどのため、忍耐力や予測不能な事態に柔軟に対応する力として活かされています。
大学院での経験をどう活かせるかは全て自分次第です。研究で身につけたものをどのような形で社会に還元できるのかを考え、自発的な姿勢で仕事に向き合っていきたいと考えています。
【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
少しでも研究に興味がある方には、環境が許す限り進学を勧めたいです。研究に没頭できる期間は限られており、大学院で得られる知識や経験は、その後の人生に無限の可能性を広げてくれるものです。自分次第で、未来に大きく活かすことができる貴重な機会だと思います。