大学院 保健学科研究科

GRADUATE
SCHOOL OF
MEDICAL
LABORATORY
SCIENCE

検査技術科学分野

OVERVIEW

概要

検査技術科学分野の概要図

検査技術科学分野は、2022年10月に大講座制から小講座制に移行しました。それに伴い、「微生物・遺伝子学講座」、「分子血液病理学講座」、「分子病態・循環生理学講座」、「細胞生理・免疫学講座」の4講座が開設されました。
小講座制の大きな目的は、研究および教育面での教員間連携を強固にし、さらに研究室や領域を跨いだ研究活動を活発化することが目的です。大学院生はそれぞれの講座の教授および准教授、講師の下、研究活動や専門資格の取得に向けて過ごすことになります。さらに2025年8月には、「環境微生物・遺伝子解析講座」が開設しました。この講座は、サンデングループホールディングス(株)との産学連携の一環で、微生物特性を産業や医療分野に効果的に活用する研究を実施していきます。
各講座の詳細は以下の通りです。研究内容の詳細は、各講座・教員のホームページをご覧ください。

微生物・遺伝子学講座

微生物・遺伝子学講座

微生物学や遺伝子学に関連した講義・実習を担当します。研究では、微生物やウイルス、遺伝子解析を要する実験を行い、微生物がヒトに対して与える影響をミクロな視点から解明していきます。細胞を扱う実験が多いですが、動物実験を行うこともあります。

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分子血液病理学講座

分子血液病理学講座

病理学や血液学・輸血検査学に関連する講義・実習を担当します。研究では、遺伝子解析などを駆使して、リンパ球に関連した疾患の実態解明に取り組んでいます。
『ゲノム医療サイエンティスト育成コース』、『ゲノム医療・医科学コース』に所属する学生は、本講座の教員の下、大学院生活を過ごすことになります。

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分子病態・循環生理学講座

分子病態・循環生理学講座

生理学や一般検査学・医用工学に関する講義・実習を担当します。研究では、細胞や動物を用いて、病態の発症機序や治療方法の探索を行っています。
『超音波検査士育成コース』に所属する学生は、本講座の教員の下、大学院生活を過ごすことになります。

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細胞生理・免疫学講座

細胞生理・免疫学講座

生理学や臨床化学,免疫検査学に関する講義・実習を担当します。研究では,呼吸器疾患や免疫不全,肝疾患,筋疾患をターゲットに,病態解析を行っています。細胞や動物を使った実験が多いですが,患者さんの検査情報を用いた解析を行うこともあります。

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環境微生物・遺伝子解析講座

環境微生物・遺伝子解析講座

岡山大学大学院保健学研究科とサンデングループホールディングス株式会社 (広島県福山市) との産学連携で研究を行います。微生物の代謝や発育に着目し、産業や医療分野への応用・活用を目指し、遺伝子レベルでの研究を遂行していきます。

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STUDY

学びについて

検査技術科学分野のカリキュラムマップ

博士前期課程 2年制


臨床検査科学・高度実践研究コース

臨床検査は医療を支える大事な“柱”の一つであり、科学技術の進歩が速やかに反映される領域です。本コースでは研究活動を通して、病理学・生理学・微生物学・免疫学・生化学など、種々の専門領域における専門知識や疾患についての理解を深めます。さらに、検査技術科学分野の特性を活かし、最先端の分子生物学的な分析手法などに習熟して、新しい検査方法の研究・開発を担う創造力も高める素地を養います。

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博士前期課程 2年制


ゲノム医療サイエンティスト育成コース

がんゲノム医療が加速する中、DNAやRNAなどの解析技術やタンパク質の機能解析など実際に検体を取り扱う知識と技術をもった臨床検査技師の育成が喫緊の課題となっています。そこで本コースでは、ゲノム医療で活躍できる臨床検査技師を育成します。
学位研究を行っていく過程で、核酸の保存や抽出方法、そして様々な遺伝子解析技術を取得するとともに「遺伝子分析科学認定士」、「バイオインフォマティクス技術者」、「上級バイオ技術者」など関連する資格取得も目指します。

詳細はこちらをご覧ください。 link

博士前期後期課程一貫 5年制


超音波検査士育成コース

人工知能(AI)による検査の自動化が進む一方で、エコー検査はこれからも熟練した技術が必要とされます。本コースでは、博士前期課程、博士後期課程の一貫制(5年制)を導入することで、超音波検査士認定資格および博士学位の取得を目指します。
一貫制(5年制)を導入することで、学位取得と超音波検査士の受験資格(3年以上の臨床実習)をクリアした全国初のプログラムです。岡大病院や連携病院での臨床研修を通して、高度で実践的なエコー技能を習得できます。

博士後期課程 3年制


臨床検査科学・先端研究コース

病理学・生理学・微生物学・免疫学・生化学など、各専門領域の知識を深め、疾病の発症や進展メカニズムの解明に留まらず、診断に寄与する新しい検査方法の研究・開発を担う探求心や創造力を高めます。さらに、分子生物学的な分析手法、工学や情報科学の知識・技術等も応用し、新しい生理機能診断法や診療支援システムの研究・開発を目指します。本コースでの研究活動を通して、各専門領域における高度な知識と技術を持ち合わせ、保健・医療・福祉の向上に貢献し、先導する医療人、研究者および教育者を育成します。

研究室はこちら link

博士後期課程 3年制

特別履修

ゲノム医療・医科学研究コース

がんゲノム医療が加速する中、DNAやRNAなどの解析技術やタンパク質の機能解析など実際に検体を取り扱う知識と技術をもった臨床検査技師の育成が喫緊の課題となっています。そこで本コースは原則として「ゲノム医療サイエンティスト育成コース」を修了した者を対象とし、臨床および基礎研究を通して最先端の医科学研究を実践します。
博士前期課程で修得した技術や知識をさらに発展させ、最先端の医科学研究を実践し、high impact journalへの投稿や上級の遺伝子関連資格の取得を目指します。また、岡山大学で実際に行われている遺伝子診断業務に携わり、実務経験を積むことでキャリアアップを図ります。このように研究と実務を通して、研究と教育を両立できるサイエンティストを育成します。

PROGRAM

検査技術科学分野の先輩たちの実績

OUフェローシップ/OU-SPRING採用者輩出実績あり!

 令和3年2月に岡山大学は,文部科学省補助事業「科学技術イノベーション創出に向けた大学フェローシップ総説事業」に採択されました。 これを受けて,岡山大学の重点研究分野で研究を推進する若手研究者の養成,ひいては我が国の科学技術・イノベーション創出を担う研究者の創成を目的として, 「岡山大学科学技術イノベーション創出フェローシップ (OUフェローシップ)」が創設されました。2024年度より新たに「岡山大学次世代研究者挑戦的研究プログラム (OU-SPRING)」と名称を変更し、若手研究者への支援が行われています。
OU-SPRINGは,博士後期課程3年間の生活費 (年額220万円) と研究費 (年額40万円程度) が大学から支給され,金銭的な不安が軽減され,自身の研究に集中することができます。 採用されるには研究計画書を提出する必要があり,さらには学内での厳正な審査が行われますが,本分野からは5名 (OUフェローシップ:令和3年度1名,令和4年度1名/OU-SPRING:令和6年度2名,令和7年度1名) がこれまで採用されています。 また,OUフェローシップに採用された2名およびOU-SPRINGに採用された1名はその後,本分野の助教として着任し,モデルケースとして活躍しています。
このように岡山大学では,博士後期課程学生の研究環境を整える取り組みが盛んに行われており,さらに本分野では,高く評価される研究テーマおよび研究計画を立案する能力を培う環境も整っています。

OUフェローシップ事業についてはこちら link
日本学術振興会・特別研究員の輩出実績あり!

1985年に始まった日本学術振興会の特別研究員制度は,我が国の優れた若手研究者に対して,自由な発想の下に主体的に研究課題などを選びながら研究に専念する機会を与え,研究者の養成・確保を図る制度です。特別研究員には,博士課程在学者が対象となるDCと,修了者が対象となるPDとがあります。長年継続されている制度で,研究者としては非常に高いステータスとなる制度です。
特別研究員も,上記OUフェローシップと同様に,我が国から研究奨励金 (生活費月額20万円) と研究費 (年150万円以内) が支給され,自身の研究に専念することができます。こちらも研究計画書を作成する必要があり,国内の研究者による厳正な審査が行われますが,本分野ではDC採択者を1名 (令和3年度:1名) 輩出した実績があります。OUフェローシップだけに留まらず,国中でも高く評価される研究テーマおよび研究計画を立案する能力を培う環境が,本分野には整っています。

特別研究員についてはこちら link

THESIS & DISSERTATION

過去の学位論文題目一覧

 指導教員名をクリックすると、各教員・所属講座のHPを見ることができますので、研究テーマ等気になる方はぜひご覧ください。

2024年度(修士)

臨床検査科学・高度実践研究コース


① Extracellular vesicles derived from the stromal vascular fraction inhibit the expression of extracellular matrix degrading enzymes in an in vitro model of Osteoarthritis


② 前処理による細胞外小胞の遺伝子発現制御の検討

指導教員:廣畑聡

ゲノム医療サイエンティスト育成コース


① ゼブラフィッシュを用いた,難治性悪性リンパ腫の新規治療法の探索


② 病理画像解析を使用したDLBCLの微小環境内の細胞における相互作用の解明


③ Identification of Effective Human Plasma Proteins Targeting Idiopathic Pulmonary Fibrosis (IPF)

指導教員:佐藤康晴

超音波検査士育成コース


① ABCA1変異および肝臓遊離コレステロール蓄積は非アルコール性脂肪肝炎の進展に寄与する

指導教員:渡辺彰吾

臨床検査科学・高度実践研究コース


① 胆管ステントの閉塞に関与する細菌の解析

指導教員:後藤和義
2024年度(博士)

① Copy Number Analysis of 9p24.1 in Classic Hodgkin Lymphoma Arising in Immune Deficiency/Dysregulation (免疫不全/調節異常に起因する古典的ホジキンリンパ腫における9p24.1のコピー数解析)

指導教員:佐藤康晴

臨床検査科学・高度実践研究コース


① Clinical variables predicting liver-related events in steatotic liver disease diagnosed by liver biopsy (肝生検によって診断された脂肪性肝疾患における肝臓関連イベント予測の検討)

指導教員:廣畑聡
2023年度(修士)

臨床検査科学・高度実践研究コース


① 関節軟骨・滑膜における細胞外小胞の取り込み検討


② miR-150-5pは軟骨様細胞においてCEMIPの発現を抑制する

指導教員:廣畑聡

ゲノム医療サイエンティスト育成コース


① 肺癌細胞でのTMEM30A機能喪失はマクロファージによる貪食を誘発する


② 特発性多中心性キャッスルマン病におけるIL-6およびIL-6R発現に関する検討


③ 凍結保護剤を用いたLBC検体の保存

指導教員:佐藤康晴

臨床検査科学・高度実践研究コース


① Association of leaky gut and NLRP3 inflammasome in diet-induced NASH model (食餌誘導性NASHモデルにおけるLeaky gutとNLRP3インフラマソームの関連)


超音波検査士育成コース


① A Study of the Clinical Usefulness of the eMEMO® (防水・パッチ電極型体外式心電図レコーダーeMEMO®の臨床的有用性についての検討)

指導教員:渡辺彰吾
2023年度(博士)

① SHRSP5/Dmcr rats fed a high-fat and high-cholesterol diet develop disease-induced sarcopenia as nonalcoholic steatohepatitis progresses (高脂肪・高コレステロール食を負荷したSHRSP5/Dmcrラットは非アルコール性脂肪肝炎の進行に伴い疾患併発性サルコペニアを発症する)

指導教員:渡辺彰吾
2022年度(修士)

① 胎生後期におけるマウス腹壁でのバーシカンとコラーゲンの分布


② Elucidation of the temporal and spatial mode of extracellular matrix remodeling in ventral wall development


③ マクロファージの分極とオステオポンチンとCCR2の発現-非アルコール性脂肪肝炎線維化への関与-


④ 間質血管画分に由来する細胞外分泌小胞の軟骨様細胞に対する作用

指導教員:廣畑聡

① 形質細胞型特発性多中心性キャッスルマン病におけるIL-6免疫組織化学染色の検討


② メトトレキサート関連リンパ増殖異常症におけるNOTCHシグナルの遺伝子解析


③ 遺伝子解析に有用な細胞固定液と保存温度

指導教員:佐藤康晴

① Helicobacter pyloriと共培養される胃内硝酸塩還元菌の細胞に対する作用

指導教員:横田憲治

① CCL2抑制能を強化した間葉系幹細胞による肺気腫進展抑制効果の検討


② 重症喘息患者のける呼吸機能、QOL、2型バイオマーカー、増悪評価を中心とした前向き観察研究

指導教員:宮原信明

① 鉄過剰は選択的オートファジーを介しフェロトーシスを誘発しNASHを悪化させる

指導教員:渡辺彰吾
2022年度(博士)

ゲノム医療・医科学研究コース


① Idiopathic Plasmacytic Lymphadenopathy Forms an Independent Subtype of Idiopathic Multicentric Castleman Disease (特発性多中心性キャッスルマン病の独立したサブタイプを形成する特発性形質細胞性リンパ節症)

指導教員:佐藤康晴

① Suppression of nitric oxide synthase aggravates non-alcoholic steatohepatitis and atherosclerosis in SHRSP5/Dmcr rat via acceleration of abnormal lipid metabolism (一酸化窒素合成酵素の抑制は、異常な脂質代謝の促進を介してSHRSP5 / Dmcrラットにおける非アルコール性脂肪肝炎およびアテローム性動脈硬化症を悪化させる)

指導教員:渡辺彰吾
2021年度(修士)

① The screening tests of metabolic disorder using a microliter-scale fingertip blood


② 関節を構成する細胞への細胞外分泌小胞の取り込み機構の解析

指導教員:廣畑聡

① 遺伝子解析および形態観察に有用な細胞固定液の開発


② Investigation of IgG4-positive cells in idiopathic multicentric Castleman disease and validation of the 2020 exclusion criteria for IgG4-related disease


③ Cytopathological findings of secretory carcinoma of the salivary gland and the diagnostic utility of Giemsa staining

指導教員:佐藤康晴

① Elevated uric acid by fructose overload exacerbates NASH and atherosclerosis via oxidative stress


② XO阻害薬フェブキソスタットによる抗酸化作用は肝臓・血管系を保護する

指導教員:渡辺彰吾
2021年度(博士)

① Diagnostic Utility of SOX4 Expression in Adult T-Cell Leukemia/Lymphoma (成人 T 細胞性白血病/リンパ腫における SOX4 発現の診断的有用性)

指導教員:佐藤康晴

FUTURE

卒業後の進路

卒業後の進路
【博士前期課程】
岡山大学大学院保健学研究科(助教)
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
岡山大学病院(検査部)
広島大学(技術系職員)
愛媛大学総合科学研究支援センター(技術系職員)
就実大学薬学部医療薬学科(実験助手)
川崎医療短期大学(助教)
阪大理研観音寺研究所研究開発
綜合臨床サイエンス(東京)
化学及血清療法研究所
阪大微生物病研究会(香川)
岡山大学大学院保健学研究科博士後期課程
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科博士課程
CAC医療技術専門学校
岡山大学医学部歯学部附属病院
川崎医科大学附属病院 MEセンタ-
川崎医科大学附属病院岡山協立病院
愛媛大学医学部附属病院
大阪大学医学部附属病院
神戸大学医学部附属病院
名古屋大学医学部附属病院
(株)ロッシュ
(株)シスメックス
(株)シーメンス
(株)東洋紡績
(株)タカラバイオ
(株)ユニチャーム
(株)グラクソ・スミスクライン
(株)大塚製薬工場
(株)サラヤ
(株)オリエンタル酵母工業株式会社
(株)朝日インテック(技術職)
(株)日立メディコ
(株)第一三共
(株)大正富山医薬品
(株)WDBエウレカ(東京)
(株)健栄製薬
ファルコバイオシステムズ
フィリップス・レスピロニクス
オアシスソリューション
西日本メディカル
和歌山県立医科大学附属病院
兵庫医科大病院
済生会松山病院
岡山市民病院
岡山協立病院
福山市民病院
尾道市民病院
広島赤十字・原爆病院
姫路聖マリア病院
谷口ハートクリニック
心斎橋睡眠呼吸障害センター
大森赤十字病院(東京)
大山病院
中央労働災害防止協会
医療法人桐和会
竜操整形外科病院
愛知県職員(県立病院)
兵庫県職員
宮崎県
岡山市職(臨床検査)
津山保健所
藤沢市保健所
【博士後期課程】
岡山大学大学院保健学研究科(助教)
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
帝京大学医療技術学部臨床検査学科(助教)
川崎医療短期大学臨床検査科(助教)
岡山大学病院検査部(社会人)
九州大学(社会人)
川崎医療福祉大学(社会人)
香川保健医療大学(社会人)
川崎医療短期大学(社会人)
千里金蘭大学(社会人)
岡山医療センター(社会人)
岡山赤十字病院(社会人)

INTERVIEW

大学院生に聞く!

臨床検査科学・高度実践研究コース/臨床検査科学・先端研究コース

河井 友来さん (博士前期課程1年・研究分野:生理学)

在学生01

【コースの特色と魅力】
動物実験から遺伝子解析といった他分野にわたる幅広い知識・実験手技を習得できることがこのコースの特色です。また、論文抄読会を通して自分と違う分野の研究に触れたり、病院でのアルバイトで臨床的な経験を積んだり、各個人の目標に向けた様々な活動に取り組みやすい環境が整っています。

【何を学んでいるか / 何を学べるか】
他の研究室の方と共同して、口腔細菌が肝性脳症に及ぼす影響について研究をしています。初めは知識も技術も持っていませんでしたが、先生や先輩方の助けを借りながら日々知識を培い、試行錯誤して自分の研究を進めています。自分の研究について国内や海外の学会で発表する機会もあるので、とても良い経験になると思います。

【これからの夢や目標】
将来は臨床検査技師として病院で働きたいと思っています。近年、臨床検査技師の働き方や求められる能力が変化してきており、自分自身で考え、意見を提案できる人材が求められています。大学院で培った能力を臨床の現場でも発揮できるよう、これからの研究活動に力を注いでいきたいと考えています。

臨床検査科学・高度実践研究コース/臨床検査科学・先端研究コース

小松原 万里奈さん (博士前期課程1年・研究分野:微生物学)

在学生01

【コースの特色と魅力】
感染症は個人の健康だけでなく、ときに「人々の生活そのもの」を脅かす危険性を孕んでいます。微生物学は、そんな感染症に焦点を当てることで、人々に「健康」と「安心な生活」を提供できる点が魅力であると考えています。この研究室の最大の特色は、細菌の取り扱いを学べることですが、その他にも細胞実験やPCRなど、幅広い実験方法を学ぶことが可能です。

【何を学んでいるか / 何を学べるか】
現在は口腔細菌のバイオフィルムに関する研究を行っており、各菌に対する殺菌剤の効果を検証しています。また、大学病院から検体をお預かりし、ピロリ菌の薬剤感受性試験に携わる機会もあります。私はこうした経験を通して細菌の取り扱いを始めとした実験の手技を学んでいます。また、学会に参加することもでき、発表のスキルを磨く素晴らしい機会となっています。

【これからの夢や目標】
将来は、大学院で培った微生物学に関する専門知識を生かして社会に貢献したいと考えており、臨床検査だけでなく、企業における研究開発職や品質管理職なども視野に入れて就職活動に取り組んでいます。自身が得た知識と技術が、より多くの人の「健康」と「安心」につながるよう日々の勉強に励んでいます。

ゲノム医療サイエンティスト育成コース

木下 涼生 (博士前期過程1年・研究分野:病理学)

在学生01

【コースの特色と魅力】
本コースでは、がんゲノム医療で必要とされる核酸やタンパク質の取り扱いに関する知識と解析技術を学ぶことができます。また、これらの知識を活かした研究活動も活発に行われ、充実した勉学と研究の日々を送ることができます。遺伝子関連の資格取得にも挑戦し、自分自身に多くの付加価値を付けることができる点も大きな魅力です。

【何を学んでいるか / 何を学べるか】
研究を進める中で、新たな解析技術や遺伝子に関する知識を習得し、日々成長を感じています。また、この過程で物事を多視点から考える重要性を学びました。遺伝子解析のやりがいや楽しさを実感できるだけでなく、異なる視点から問題を捉え、柔軟な思考を身につけることができます。

【これからの夢や目標】
大学院での研究を経て、卒業後は臨床の現場で実務経験を積むことを計画しています。
臨床現場で多くのことを学び、実践的な知識と技能を深めていきたいと考えています。将来的には大学教員となり、臨床で得た経験を基にした教育を行い、次世代の医療従事者を育成することを目標としています。高度な研究技能と臨床技能を併せ持った指導者として、教育と研究の両面で貢献していくことを目指しています。

超音波検査士育成コース

中山 日菜子さん (博士後期課程1年・研究分野:生理学)

在学生01

【コースの特色と魅力】
研究活動と並行して連携病院での研修や学内実習を行うことができる点が,本コースの最大の特色です。臨床現場で必要となる技術や知識を早期から習得できるため,大学院に在学しながらも臨床検査技師としてのスキルアップを図ることができる点が魅力だと感じています。また,近年は臨床研究にも着手しており,本コースで得た技術や知識を研究にも応用することが可能である点も魅力的だと思います。

【何を学んでいるか / 何を学べるか】
私は主に,循環器の分野について勉強しています。現在は連携病院とクリニックにて,週に2回実習を行わせていただいています。実習では,患者さんの心臓超音波検査を実際に行い,先輩技師や循環器内科の先生にご指導いただきながら技術の向上や疾患等に関する知識の習得を目指しています。また,心電図検査など他の生理機能検査にも携わらせていただいており,幅広く経験を積むことが可能です。

【これからの夢や目標】
大学院在学中に超音波検査士の認定資格を取得し,将来は大学教員として社会に貢献することを目標としています。研究活動や実習を通して,本コースで高度な研究技能と臨床技能を習得し,両者を併せ持った指導者を目指していきたいです。

MESSAGE

活躍するOB・OG

大学院で伸ばす自分の強みと創造する新たな価値

前濵 かんなさん

2018年 長崎県立長崎南高等学校普通科 卒業
2022 年 岡山大学医学部保健学科 卒業
2024年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2024年 地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター 医療技術部 臨床検査部門 勤務
OB03

【大学院に進学した理由は何ですか?】
私が卒業研究で所属した佐藤研究室では、研究に加えて抄読会や学会発表、資格取得など、これまでの授業や実習とは異なる新たな学びの機会が多くありました。当初から、大学卒業後の選択肢の一つとして大学院進学を考えていましたが、佐藤研究室での学びや経験、さらには大学院で活躍する先輩方の姿に刺激を受け、自分も研究活動を通して、臨床検査技師とは異なる新たな付加価値をつけたいと強く思うようになり、大学院への進学を決意しました。

【大学院での生活はどのようなものでしたか?】
大学院では実験をはじめとする研究活動に加え、臨床検査技師として臨床での遺伝子解析業務にも従事しました。遺伝子検査は、結果が診断や治療に直結する非常に重要な検査です。 したがって、常に正確な検査結果を報告するためには、検査に関わる全ての過程を疎かにしてはなりません。この経験を通じて、任された仕事に対する責任感をこれまで以上に強く意識するようになりました。

振り返ると、あっという間の2年間でした。初めはわからないことばかりの不安な日々が続き、時には悔しさから涙することもありました。そのような中で支え合い、共に困難を乗り越えてきた同期の存在は大きく、卒業した今でも困った時には相談し合う、大切な仲間となりました。 また、先生や先輩、後輩にも恵まれ、非常に有意義な充実した大学院生活を過ごすことができました。

【大学院での経験は、社会でどのように活かされていますか?】
大学院での活動を通じて、専門的な知識や実験手技の習得だけではなく、人間としても大きく成長できました。特に「批判的思考力」「責任感」「チャレンジ精神」の3つは、病院にて臨床検査技師として働く現在、様々な場面で役に立っていると感じます。

毎週の抄読会や後輩指導などを通じて養った「批判的思考力」は、検査結果が患者さんの状態を正確に反映しているかを常に疑い、慎重に結果の解釈をする姿勢に繋がっています。また遺伝子解析業務や研究活動で培った「責任感」により、血液・生化学検査を担当する現在、一度に沢山の検体を扱う中でも、取り違えや誤った結果の報告を防ぐため、基本的な手技や知識の見直しを徹底しています。さらに学会発表や資格取得、共同研究への参加を通じて得た「チャレンジ精神」により、新たなことへ挑戦する際の不安を乗り越え、周囲の助けを借りながら成長できていると実感しています。初めは、自身が大勢の前で発表する姿は想像し難く、自分には難しそうという先入観がありました。しかし、実際に挑戦してみると意外にも何とかなるものだと実感し、今では「自分にできることからやってみよう!」という気持ちで、初めてのことにも果敢に取り組めるようになりました。初めは苦手意識のあった遺伝子検査学に対しても、資格取得に向けた勉強をきっかけに興味が深まり、さらに学びを深めたい分野の一つとなりました。

【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
大学院では努力次第で、自分に多くの付加価値をつけることができます。大学院へ進学することで、大学の同級生よりも2年、社会に出るのが遅くなるかもしれません。しかし、それ以上に大学院で過ごした時間や学生時代のうちに何かに一生懸命取り組んだ経験は、かけがえのない財産となります。そのため、少しでも大学院での生活に興味があれば、ぜひ大学院進学を検討してほしいと思います。各分野のスペシャリストである先生方が多く在職している検査技術科学分野では、新たな研究の世界を知り、今後の人生における選択肢を増やすことができるはずです。

大学院は未来に大きく活かすことができる貴重な機会です

前川 倖希奈さん

2017年 滋賀県立石山高等学校普通科 卒業
2021年 森ノ宮医療大学医療技術学部臨床検査学科 卒業
2023年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2023年 キヤノンメディカルシステムズ株式会社 MRI営業部 勤務
OB02

【大学院に進学した理由は何ですか?】
私が大学院に進学した理由は、一言で言うと「好奇心」です。
学部生の頃、私は大腸癌の浸潤・転移のメカニズムを研究する研究室に所属していました。実験や細胞の管理で多くの時間を費やしましたが、目に見える成果が出た時はとても達成感を感じ、研究が大好きになっていきました。研究を進めていく中で、固形癌だけでなく血液の癌、疾患についても研究したいという気持ちが芽生え、異なる環境でさらに深く学ぶことを考えました。病院に就職する友人たちより2年遅れての就職になることには不安もありましたが、好奇心が勝り、もっと研究を続けたいという思いから大学院への進学を決意しました。

【大学院での生活はどのようなものでしたか?】
大学院生活は、全てが充実したかけがえのない時間でした。
学部生の頃は研究の規模が小さく、個人で黙々とやるような研究生活でした。しかし岡山大学大学院では、研究環境が整っており規模も大きいためよりやりがいを感じましたし、チームとして他の人が行っている研究について知る機会が多く、さまざまな方に相談しながら研究を進められたことがとても良かったと感じています。
さらに研究室の先生、先輩、同期、後輩に恵まれ、関わってくださった全ての方のおかげで人として成長でき、大学院に進学していなかったら学べなかった多くの知見を得ることができました。なにより他大学から進学してきた私を暖かく迎えてくださり、とても嬉しかったです。
また、若手研究者を盛り上げるためのイベント運営に参加することで、他学部の学生や先生方と交流する機会がありました。そこでは、異なるバックグラウンドを持つ方々と意見交換を行うことができ、さらにチームワークの大切さも学ぶことができ、とても貴重な経験になりました。

【大学院での経験は,社会に出てどのように活かされていますか?】
仕事をする上で大きく活かされているスキルは2つあります。
1つ目はプレゼンテーションのスキルです。私は現在、特定の製品の専門家としてお客様と向き合う技術営業職として働いています。この仕事ではお客様の前で担当製品のプレゼンテーションをする機会が多く、研究活動を通じて身につけた専門分野をプレゼンテーションするスキルは、現在の仕事に非常に活かされています
2つ目は忍耐力です。研究は全てが想定通りに進むことは少ないです。さまざまな可能性を思考するのに多くの時間を費やし、研究がうまくいかなかった時には忍耐力が求められました。これにより、長期的なプロジェクトや予期せぬ困難に対する耐性が自然と身につきました。現在の職場でも、私が担当する製品では長期にわたる商談に向き合うことがほとんどのため、忍耐力や予測不能な事態に柔軟に対応する力として活かされています
大学院での経験をどう活かせるかは全て自分次第です。研究で身につけたものをどのような形で社会に還元できるのかを考え、自発的な姿勢で仕事に向き合っていきたいと考えています。

【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
少しでも研究に興味がある方には、環境が許す限り進学を勧めたいです。研究に没頭できる期間は限られており、大学院で得られる知識や経験は、その後の人生に無限の可能性を広げてくれるものです。自分次第で、未来に大きく活かすことができる貴重な機会だと思います。

岡山大学大学院では将来への大きな財産となる幅広いスキルを磨けます

安藤 亮典さん

2016年 岡山県立倉敷青陵高等学校 卒業
2021年 岡山大学医学部保健学科 卒業
2023年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2023年 岡山旭東病院 診療技術部 臨床検査課 勤務
在学生01

【大学院に進学した理由は何ですか?】
大学入学時,私は卒業後すぐに病院就職することを念頭に置いていました。しかし,学部4年時のオリエンテーションの際に,『これからは現場の検査技師も学術的な貢献が求められるようになる』という話を聞き,臨床で働くにしても大学院で早期から学術的な考察力や論理的思考力を養っておくことは重要だと考え直し,大学院を経てから病院に勤務しようと決めました。

【大学院での生活はどのようなものでしたか?】
実験はもちろんのこと,進捗報告会や自身の研究に関連した論文抄読,TA業務,学会発表,論文執筆にくわえ,クリニックでの検査技師としてのアルバイトもさせていただいていました。多忙な2年間でしたが,日々,自身の成長を実感できた期間でもありました。最初は,先生に手取り足取り教えていただきながら研究を進めていましたが,次第に自分で考えながら実験を行えるようになりました。これは,論文抄読を重ね,研究内容に関する知識や理解が深まり,課題解決力が自然と身に付いたためだと考えています。この2年間を経なければ,日々更新される情報を主体的に調べ,その情報を基に行動に移す能力は養えなかったので大変有意義な時間でした。
また,切磋琢磨し合える同期や尊敬できる先生・先輩方,頼もしい後輩達と共に和やかな環境で大学院生活を過ごすことができたので,実験が上手く行かなった時も互いにフォローし合うことで乗り越えていくことができました。

【大学院での経験は,社会に出てどのように活かされていますか?】
病院では,日々の検査業務に加え,検査機器の精度管理や各種委員会,学会発表など,マルチタスクをこなさなければならない場面が多くあります。そのため,スケジュール管理が非常に重要となり,大学院でマルチタスクに対してのスケジュール管理能力を鍛えられたことは今に活かされています。
また,病院ではさまざまな年代や背景を持つ患者様や他部署の方に,検査に関する情報を伝える場面が多くあります。その他,私が勤務する病院では,検査室の定例会や勉強会も行われます。その際に重要なのは,理解しやすく説明することですが,これは非常に難しく一朝一夕で身に付く能力ではありません。大学院では,進捗報告会や論文抄読会,TA業務など多くの場を経験することで,物事を相手に分かりやすく伝える能力が鍛えられました。何かに例えたり,言い換えたり,時にはイラストを駆使したりと,多様な伝え方を修得でき,これは現在も非常に役立っています

【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
私にとって大学院は,自身の可能性を最大限に拡げ,学部生まででは気付けなかった自分の新たな能力を知ることができた貴重な場でした。それと同時に,幅広い経験をさせていただいたことから,多少のことでは動じない人間力も身に付いた場でもあります。
大学院修了後は,企業や臨床,研究者,大学教員などさまざまな進路が考えられますが,どの道に進んでも課題解決力,プレゼンテーション能力,指導力は求められます。実際に,検査技師として働く今でも,これらの能力を養っていて良かったと思える場面は多くありました。学部生の時点では,大学院は高いハードルのように思えるかもしれませんが,人生という長い尺度で見た際に,早い段階でこのような能力を盤石なものにできることは,大きな財産となります。岡山大学大学院では,そのスキルを磨ける環境が十分整っていますので,皆さんもまたとないこのチャンスをものにしてみてはどうでしょうか?

人生の転機をここ岡山大学で

藤井 萌さん

2016年 岡山県立岡山大安寺中等教育学校 卒業
2020年 鳥取大学医学部保健学科 卒業
2022年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2022年 愛媛県立医療技術大学保健科学部 助教
在学生01

【大学院に進学した理由は何ですか?】
私が大学院に進学した理由は,“研究を一から学んでみたい”と思ったからです。学生時代,将来は大学病院で働き,研究活動にも従事したいと漠然と考えていました。大学4年時に卒業研究を経て,研究の基礎をしっかり学び,研究スキルを身に付けたいという思いが強くなり,大学院進学を決めました。

【大学院での生活はどのようなものでしたか?】
振り返ってみると,『とにかく楽しかった!』そんな大学院生活でした。もちろん,実験に失敗したり,初めての学会発表で緊張したり,論文執筆に追われて遅くまで研究室に残ったりなど,大変なこともありました。しかし,それ以上に多くの学びがあり,充実した2年間でした。何より,研究室のメンバーに恵まれたことも大きく,同期や先輩,後輩,先生方の温かいサポートのおかげで,日々楽しみながら成長できたと感じています。

【大学院での経験は,社会に出てどのように活かされていますか?】
大学院では,自身の研究活動に加え,学部生の研究指導やTAとしての実習補助,病院での補助業務など幅広い経験をさせていただきました。これらの経験から,論理的思考力や探求力,コミュニケーション能力など,社会人として求められるスキルが身に付きました
また,大学院に進学し,修士号を取得したことが私の人生の大きな転機になりました。在学中のご縁で,現在は大学教員として働きつつ,博士号取得を目指しています。博士前期課程で培った能力を基に,より高度な研究能力を身に付けられるよう日々奮闘中です。そして将来,私が大学院で得られた経験を,学生にもさせてあげられるような教員を目指したいと考えています。

【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
院進学を考えている皆さんの中には,「知識不足かも」「不器用だし」といったことを心配している方もいるかもしれませんが,気にする必要はないと思います。真摯に,謙虚に,素直に取り組みさえすれば,必ず周りの先生方や仲間がサポートしてくれます。また,奨学金など,金銭面でのサポートも現在は充実しています。少しでも“大学院に興味がある”,“研究って面白そう”,そんな方は岡山大学大学院で一歩踏み出してみませんか?その一歩が,皆さんの人生の大きな転機になるかもしれません

自分自身と向き合い,可能性を広げてみませんか?

立木 美穂さん

2014年 長崎県立佐世保北高等学校普通科 卒業
2017年 川崎医療短期大学臨床検査科 卒業
2019年 岡山大学医学部保健学科 卒業
2021年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2021年 シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティクス株式会社 勤務
在学生01

【現在は,どのような職種で働かれていますか?】
私は現在,医療機器メーカーで,生化学・免疫検査装置に関する業務に取り組んでいます。病院や検査センター等で働かれている臨床検査技師の皆様と関わりながら,新たな気づきや学びを得ることができる毎日はとても充実しています。このように自らが望む進路選択を実現できたのは,岡山大学での大学院生活があったからだと考えています。

【大学院に進学した理由は何ですか?】
私は当初,病院で働くことを目指して日々の勉強に取り組んでいました。しかし,学部生時代に研究室へ所属した事がきっかけで改めて自分の進路について考え,向き合うようになりました。それは私が所属した研究室のメンバーの影響によるものです。彼らは多種多様なバックグラウンドを持っており,企業への就職を目指す先輩,大学の教員や研究者になることを考えている仲間,それぞれが自分と向き合い,日々の研究に取り組んでいました。そこで私も将来の選択肢を増やし,可能性を広げるために大学院への進学を決意し,研究に取り組みました。

【大学院での経験は,社会に出てどのように活かされていますか?】
-大学院生活で得られたものは,大きく分けて2つあると感じています。1つ目は,物事に主体的に取り組む姿勢です。自らの研究テーマに対して好奇心を持ち,文献や学会での情報収集を怠らず,積極的に研究に取り組むことの重要性を周囲から学び,自らも努力したことで主体性を身につけられました。2つ目は論理的思考力と多角的視点です。仮説を立て,検証し,その結果をもとに考察し,次の実験の計画を立てるというプロセスを常に繰り返すことによって,物事を論理的に解釈し,多角的な視点から捉えることができるようになりました。これらのスキルは,社会に出た現在でもさまざまな場面で活かされています。

【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
これほど有意義な大学院生活を送ることができたのは,先生方や研究室のメンバーなど周囲の手厚いサポートがあったこと,また,最新設備や機器など研究環境が整っていたことのおかげです。皆さんもぜひ素晴らしい環境である,岡山大学大学院で自分自身の可能性を広げてみませんか?

大学院での経験は人生の糧になります

西村 拓人さん

2013年 兵庫県立姫路飾西高等学校 卒業
2016年 川崎医療短期大学臨床検査科 卒業
2018年 岡山大学医学部保健学科 卒業
2020年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2020年 第一三共株式会社 勤務
在学生01

【大学院に進学した理由は何ですか?また,どのような大学院生活でしたか?】
私が大学院へ進学した理由は『研究に興味があったから』です。自分に研究が向いているかどうかは勘定に入れませんでした。その結果,学もなく手先も不器用だった私は,右も左も分からず,挙句,高価な実験試薬を何度も無駄にするなど研究室に多大な迷惑をかけ続けました。しかし,先生や先輩方はそんな私を決して見捨てることなく,優しく穏やかに向き合い続けてくださり,無事に学会発表や論文執筆もやり遂げることが出来ました。

【大学院での経験は,社会に出てどのように活かされていますか?】
現在は営業職として働いていますが,大学院で培った能力や経験は決して無駄にはなりません。例えば,研究活動を通して課題・目的を明確にし,物事を順序立てて思考する能力が自然に身につきますが,このような論理的思考力は社会人として必須でありながら一朝一夕で身に着けることは出来ません。

【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
大学院進学に,確固たる目標や崇高な理念は必要ないと思います。研究に興味がある。就職活動に役立ちそう。なんとなくカッコよさそう。どんな理由であれ本気で取り組めばきっと人生の糧になると思いますし,それに応えてくれる環境が岡山大学大学院にはあると思います。この文章を読んでくださった皆様が,岡山大学大学院への進学に少しでも前向きになっていただけていれば大変嬉しく思います。

大学院では臨床でも役立つ知識と能力を培えます

熊﨑 章太さん

2013年 愛知県立一宮市南高等学校普通科 卒業
2017年 岡山大学医学部保健学科 卒業
2019年 岡山大学大学院保健学研究科 修了
2019年 名古屋大学医学部付属病院 医療技術部 臨床検査部門
在学生01

【現在は,どのような職種で働かれていますか?】
私は,保健学研究科博士前期課程を卒業した後,病院で臨床検査技師として働いています。働き始めて3年ほどですが,この先,臨床検査技師の働き方や求められる能力は大きく変わっていくと感じています。

【具体的にどのように変わると思いますか?そこに大学院での学びは活きると思いますか?】
検査の機械化・自動化,タスクシフトでの業務拡大,医療法の改正といった変化を受けて,中央検査はもちろんのこと,POCT(point of care testing)の管理やチーム医療への参画など,検査室にいる時間が減り,外来や病棟,オペ室といった検査室の外に赴く時間が増えています。そういった働き方が変化している中で大切なことは,自分自身で考える力,考えるにあたっての知識を率先して習得する能力だと思います。もちろん,臨床で働きながらでもこれらの力を身に着けることはできますが,大学院ほど適した環境はないと思います。論文を読み,知識を得て仮説を立て実験し,結果をまとめて考察する。発表した内容に対して意見交換をする・・・。一連の流れを学ぶ時間はとても貴重です。臨床の現場に出てから,大学院時代に培った力を発揮する場面も多く,進学して良かったと感じています。

【これからの臨床検査技師に求められるものは何だと思いますか?】
-近年の臨床検査技師はMedical TechnologistsではなくBiomedical Laboratory Scientistsと呼称されることもあり,技術者から科学者・専門家へと専門性を高めています。これからの時代は言われたことをただ行う技師ではなく,意見を述べ提案し,協議が出来る技師が求められるのではないかと思います。そのためには,大学院での学びは非常に重要で,意義あるものだと身を持って感じています。
【大学院進学を悩んでいる学生に一言】
現場を目指す人の中には,学部卒の人達との差が気になるという人もいるかもしれません。ただ,私自身は働いてから2年の差が大きいと感じたことはありません。むしろ,大学院での学びが非常に大きく,進学して良かったと思うことが多いです。人生の中での2年なんてあっという間ですよ!

一歩先の教育・研究の場に身を置き、自分を高めてみませんか?

愛媛県立医療技術大学臨床検査学科 准教授
祇園 由佳さん

OB01

私は、保健学研究科博士前期課程の卒業生です。学部生時代は、臨床検査技師になることを目指し、単位!単位!と目の前の単位取得のみに努力する日々を送っていました。しかし、まだ誰も知らないことを自分が明らかにしていく「研究」という道に興味を持ち、大学院に進学しました。大学院進学当初は、何も知識がなく、不安なことも多々ありましたが、先輩方が沢山相談にのってくれ、つきっきりで実験指導をしてくださいました。その経験の積み重ねにより、今では特に何も意識せずとも、正しい操作で遺伝子解析などをできているのだと実感しています。

学部学生では経験できなかったことを、大学院生活ではたくさん経験できます。自分の研究をまとめ、発表するという経験も大学院生の醍醐味だと思います。学会会場に行けば、世界で活躍している先生方に出会える機会があり、自分の研究をさらに発展できるチャンスもあります。論文を検索し読み解く力、研究発表をまとめる力も、なかなか臨床の場では培えないものです。

研究を行う上では、臨床検査技師も医師も、肩書は一切関係ありません。一人の研究者として、岡山大学大学院でその一歩を踏み出してみませんか?