看護学専攻


人間性豊かな看護者の育成をめざして ―
看護学専攻の教育目標は、人間の主体性とプライバシーを尊重し、専門的な看護知識と技術を用いた看護を行うこと、科学的判断及び創造的思考に基づき、さまざまな健康レベルの人に対して看護実践ができること、および看護学の発展や国際化に貢献できる看護者を育てていくことです。
卒業により得られる学位 学士(看護学)
卒業により得られる国家試験受験資格 看護師,保健師※1
※1:保健師課程は選択制です。→ 【保健師課程選択制】
保健師の国家試験に合格後、申請により取得可能な資格 養護教諭(2種)※2,衛生管理者(1種)
※2:所定の単位を取得した者に限る
国家試験合格率(平成30年度) 看護師国家試験/98.8% 保健師国家試験/100%
看護学の魅力
助産師や保健師も含め、ひろく看護という仕事はたいへんやりがいがあると同時に、看護学という学問は魅力的です。わたしは医師ですが、医療を行うパートナーとしての看護師さんの重要性を認識しているだけでなく、看護という学問に魅せられているひとりです。
医学は患者をパーツの集まりとして捉える傾向が強いのに対して、看護学は、患者さんを、”as a whole” (全体として)捉えることを基本としています。また病める人だけでなく、健康な人を含めて様々な健康状態、ライフステージにある人を対象とする科学です。それは自然科学であるとともに人文科学であり、社会学です。幸い岡山大学は有数の規模を誇る総合大学であり、こうした総合科学である看護学を学ぶのに適した環境にあります。皆さんとともに、看護学の魅力を追求することを楽しみに待っています。
保健・医療のための能力を身につける5つの学び
我が国で国家資格を持つ看護の専門家には看護師、保健師、助産師があり、国内外の医療現場や地域等で幅広く活躍しています。医療チームの中で看護師の果たす役割は重要になっており、看護教育の大学化が加速しています。そこで看護学専攻では、以下の5つの能力を獲得するための教育を強化します。
人間性に富む医療のための豊かな教養
津島キャンパスでは、主として教養教育科目を履修すると共に、交流を通して豊かな教養、幅広い視野と独創性、人間性に富む医療を実践するための感性を身につけます。
あらゆる人々の健康促進のための専門性
看護専門科目では、様々な健康レベルにある人々を総合的に理解し、その人の最適な健康状態を目指した看護を学びます。岡山県下の医療施設での実習を通し、幅広い視点と倫理観に基づいて人間を理解することを学びます。
健康二ーズに応え、発信する情報力
医療系学部共通科目として、チーム医療論、カウンセリング、医療経済学、災害危機管理論、ボランティア実践、救命救急医療等があります。主体的に医療のニーズを学ぶことにより、情報発信する能力を養います。
医療・保健に関するリーダーとしての行動力
鹿田キャンパスでは、医学部、歯学部、薬学部の学生や岡山大学病院のスタッフとの交流を通して刺激を受け、ロールモデルとすることができます。多様な医療チームとの交流の中でコミュニケーション能力、行動力、リーダーシップを身につけます。
健康的な生活を追い続ける自己実現力
大学での4年間の学びを通して、医療人として信頼される豊かな人間性と教養を備え、生涯にわたる内省的実践に基づき、自己をマネジメントすることや自己実現を図ってゆく力を養います。

学内演習(血圧測定)

看護学実習(車イスによる患者搬送)
医学部保健学科 看護学専攻の理念
- 看護は病気をもっている人ばかりではなく、あらゆる人々が対象で、看護ケアを通して、人々がより質の高い生活を獲得することを目標にしています。
- あらゆる健康レベルの人々の看護を実践するために、看護職は病院、診療所、地域、企業、学校といった広い領域で活躍しています。
- 看護職は保健・医療・福祉チームのメンバーとして機能しています。
- 看護は特に深い人間理解と、専門的な知識および技術、さらに心理・社会科学及び生活技術の能力を必要とします。
- 看護は問題解決思考、または未来・創造思考に基づいて目標を設定し、計画・実施・評価のプロセスでは論理的思考能力が求められています。
- 看護職は国内ばかりではなく、国際社会に目を向けた活動ができる能力が求められています。
看護学専攻では、以上のことを踏まえ、保健学科の共通理念の人間尊重とヘルスプロモーションの精神を活かし、講義・演習・実習のカリキュラム編成や実施に当たって多くの工夫を凝らしています。
学生の意見もとり入れ、よりよい学習環境を作るよう努力しています。
医学部保健学科 看護学専攻 専門科目
専門基礎科目
生命科学 | 栄養・代謝学 | 形態・機能学Ⅰ | 形態・機能学Ⅱ |
---|---|---|---|
形態・機能学演習 | 感染免疫学 | 基礎遺伝子学 | |
基礎病態学 | 臨床薬理学 | 基礎微生物学 | |
人間科学 | 保健科学入門 | ヘルスプロモーション入門 | 教育学入門 |
発達心理学 | 臨床心理学 | 医学概論 | |
情報科学 | 情報数理科学Ⅰ | 情報数理科学Ⅱ | レギュラトリーサイエンス入門 |
医用工学入門 | 保健統計学 | ||
保健福祉科学 | 国際保健システム論 | 国際公衆衛生論 | 地域保健環境論 |
保健行政論 | 社会福祉論 | *基礎公衆衛生 |
医療系学部共通科目
医療系学部 共通科目 |
チーム医療論 | 救命救急医療 | カウンセリング |
---|---|---|---|
医療経済学 | 災害危機管理論 | ボランティア実践 |
専攻の専門科目
看護病態学 | 看護と病態生理 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ | 感染看護学 | 看護生理学Ⅰ・Ⅱ |
---|---|---|---|
基礎看護学 | 看護学原論 | ケア技術のエビデンスⅠ・Ⅱ | 看護人間関係論 |
看護過程論 | 健康生活援助論Ⅰ・Ⅱ | 療養生活援助論Ⅰ・Ⅱ | |
基礎看護学実習Ⅰ・Ⅱ | |||
成人看護学 | 成人看護学概論 | 成人看護学Ⅰ・Ⅱ | エンドオブライフケア論 |
成人看護学実習Ⅰ・Ⅱ | |||
老年看護学 | 老年看護学概論 | 老年看護学Ⅰ・Ⅱ | 老年看護学実習 |
精神看護学 | 精神看護学概論 | 精神看護学 | 精神看護学実習 |
母性看護学 | 母性看護学概論 | 母性看護学Ⅰ・Ⅱ | 母性看護学実習 |
小児看護学 | 小児看護学概論 | 小児看護学Ⅰ・Ⅱ | 小児看護学実習 |
在宅看護学 | 在宅看護学概論 | 在宅看護学 | 在宅看護学実習 |
生涯支援看護学 | 地域看護学概論 | 家族援助論 | 生涯支援看護学Ⅰ・Ⅱ |
健康学習支援論 | 生涯支援看護学実習 | ||
看護学統合 | 看護理論 | 看護アセスメント | 看護シミュレーション教育:臨床技能評価 |
看護管理学 | 看護実践倫理 | 統合実習 | |
研究の基礎 | 卒業研究 | ||
その他 | Global Practice of the Health Scienses | Exploratory Practice Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ | |
※保健師課程 | ※公衆衛生看護学 | ※公衆衛生看護学原論 | ※公衆衛生看護学技術 Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ |
選択科目 | ※公衆衛生看護学実習 Ⅰ・Ⅱ |
医学部保健学科 看護学専攻 入学定員
76名
ユニークな講義・代表的な講義の紹介
■臨床応用看護学(成人看護学実習Ⅰ:病棟実習前 OSCE)
森本 美智子 教授 大浦 まり子 助教 梶原 右揮 助教


臨地実習では受け持ち患者を通して全人的なケアを学びます。患者を知ることが基本ですが、患者の状態を観察し、適切なケアを導いて実践する力を養うことも大切です。「成人看護学実習Ⅰ」では、病棟実習開始前に客観的臨床能力試験(Objective Structured Clinical Examination: OSCE)を行い、学生の臨床実践スキルを評価しています。学生は、提示された事例に対して、フィジカルイグザミネーションを用いて症状や状態の観察を行い、指示された看護ケアを一連の行為として行います。OSCEステーションでの実施は録画を行い、学生と教員との振り返りに用いています。緊張を伴うOSCEですが、学生は確実な観察・ケア技術を身につけようと学習や演習を重ねて臨んでいます。これらの学習を通して、学生は自分の傾向に気づくとともに、知識に裏付けられた技術が患者への安全安楽に繋がることを再確認し、新たな課題を見つけて病棟実習へと進んでいきます。
■臨床応用看護学(エンドオブライフケア論)
森本 美智子 教授

「エンドオブライフケア論」は、選択科目です。エンドオブライフの意味を考えながら、人生の終焉にある人々が最期までよりよく生きることを考えていく科目になります。専門的な知識なども学びますが、患者が死に向かう過程でどのような体験をしているのか、ワークを行いながら患者の気持ちや体験に近づくことを大切にしています。“あとどのくらい生きられるのですか?”そう患者に問われたらあなたはどうこたえるのか? そのようなことを学生に投げかけながら、生きること・死ぬことを深く考え、看護者として患者・家族とどう対峙していくのか、ケアのあり方を考えています。
■看護の統合(看護シミュレーション教育:臨床技能評価)
森本 美智子 教授 岡本 亜紀 准教授 小野 美穂 准教授



「看護シミュレーション教育:臨床技能評価」は、すべての領域実習を終了した後に、学生が自身の実践能力の到達状況を確認し、さらに高めることを目指した科目です。特にコミュニケーション力、呼吸状態の観察力、術後患者の一連の観察力(記録・報告を含む)を取り上げています。コミュニケーションについては、不安をもつ患者の場面を設定し、聴く力や伝える力の確認をしています。終了後は、SP(模擬患者)から直接コメントをもらい、それを活かすことができます。術後患者の観察については、高性能機能シミュレーターを用い、術後1日目の集中治療室(ICU)での状態をシナリオ化しています。痛み、創部(傷口)、ドレーンの挿入など、実践に近い形でリアリティをもって学生が学べるようになっています。学生は、この演習を通して、自分を客観的に見つめられるようになり、さらに大きく成長します。
■成育看護学領域(小児看護学Ⅰ-Ⅱ)
小野 智美 教授 山口 そのえ 助教
成育看護学は、赤ちゃんの出生前(胎児期)から始まり、新生児期、乳幼児期、学童期、思春期を経て、次世代を生み育てる親(母性・父性)世代の発達と心身の健康まで人間の生涯を広く見据えて、リプロダクションのサイクルを連続的に包括的に捉える看護を意味しています。成育看護学領域には、小児看護学、母性看護学、助産学が属しています。小児看護学では、子どもが一人の人間として個々の成長発達や健康状態、社会における参加や生活を保障する「子どもの権利」を重視し、チーム医療において多職種とコラボレーションしなから、個々の子どもに最適な健康状態と発達段階を踏まえた快適な生活を提供するための看護実践を目指しています。2年前期~3年前期で、子どもの成長・発達の特徴と、子どもの健康状態や病気、障がいの状態に応じた看護について学び、3年後期~4年前期に保育園や岡山大学病院の小児病棟と小児外来で実習を行います。2年後期の小児看護学Ⅰでは、子どもの権利について理解を深めながら、子どもの不安や緊張、恐怖心を和らげるためのケアとして、プレパレーションやインフォームドアセント等をケーススタディやグループワークを通して学んでいきます。