教育理念・目標(博士後期課程)

 生命科学の飛躍的発展に伴う医療の高度化・先進化、急速な少子・高齢化の進展に伴う社会・疾病構造の変化、健康維持・推進に対する国民の意識の高揚など、21世紀に入り保健医療を取り巻く環境が大きく変化している。この変化に柔軟に対応するためには保健学領域において、豊かな教養、人間性、高度な専門知識を備えた人材の養成を急ぐ必要がある。

 これらの状況に対処するために、平成10年10月に医学部保健学科及び平成15年4月に保健学研究科保健学専攻修士課程が設置された。本計画は、さらに大学院博士後期課程を設置し、より高度な知識・技術及び開発能力を持ってこの分野の実践、研究、教育に指導的に携わる人材の育成をしようとするものである。

 保健学は人間の生命の尊厳を重視しつつ、保健・医療・福祉を統合した総合的保健・医療の実現を目指すものである。そのためには実証に基づいた看護学・保健学の学問・研究基盤を確立するとともに、患者および家族のニーズをくみ取る感性、深い倫理観と総合的な判断力、そして高度な専門知識と実践力を備えた研究者・教育者の養成が必要である。そこで、大学院博士後期課程では、看護学・放射線技術科学・検査技術科学各分野の専門的知識を基に、保健・医療・福祉に関係したプログラム・システム・機器・技術の研究・開発能力をもった教育・研究者を養成する。さらに、これらの自立した研究者による「インタープロフェッショナルワーク(interprofessional work)を基盤としたヘルスプロモーションの実現」をめざす。

 「インタープロフェッショナルワーク」とは、異なる専門職が職種の壁を越えて、共に力を合わせて活動する連携と協働を意味する。ヘルスプロモーションの概念は、人びとが自らの健康をコントロールし改善することを可能にするプロセスであり、そのコントロール能力と健康を支援する活動には、専門職間の連携と協働が不可欠である。とりわけ、保健・医療・福祉を統合した健康の推進活動に参画するためには、多くの専門職の相互作用と協力関係を成立させることが重要である。そして、自らの専門性を生かして他の分野の人々と学際的な交流をすすめ、創造的な研究教育を実践できる人材を育成することが求められる。したがって、ヘルスプロモーションの実現に向かってインタープロフェッショナルワークを基盤とすることにより、3分野から構成される保健学研究科の独自性を同時に発展させることが可能である。

 本研究科博士後期課程では、看護学・放射線技術科学・検査技術科学の各専門分野に共通するコア科目として「インタープロフェッショナルワーク論」の履修を必修とする。看護職、診療放射線技師、臨床検査技師をはじめとして、医学、福祉学、工学、理学、社会科学など異なる教育的背景をもつ学生が、ヘルスプロモーションという共通の目標に向かって課題を探求し相互に学ぶプロセスをとおして、専門職間の連携と協働の意義や方法論を習得するものである。これにより、学生の多角的な視点を育て、特定領域にしばられない新しい発想と論理的・創造的思考力を培うことをねらいとしている。